「琉球王朝式樂楽器」の「長線(ちゃんせん)」のレプリカを弾く

  • 2015年10月 1日 13:18

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2004年から2006年にかけて、沖縄「首里城」を管轄する(財)海洋博覧会記念公­園管理財団によって、名古屋徳川美術館所蔵の「琉球王朝式樂楽器一式」の復元事業が行われました。「琵琶」「四線(すうせん)」「月琴」「長線(ちゃんせん)」の絃楽器の音階調査を担当した私が、その中の「長線(ちゃ­んせん)」の音楽的可能性を確認するために、レプリカの「長線」を即興的に演奏しました。そのビデオです。柱(フレット)のある楽器はそれによって音程が決められているため、この「長線(ちゃんせん)」が飾り物ではなく実際に楽器として機能していたことを確認するためには実際に演奏して確かめる、ということになります。

それにはまず糸の太さを決め、調弦しなければなりません。この復元事業で、初めて式樂楽器のなかの「笛」を実際に吹いてその音程を検証しました。館長である徳川氏の立ち会いのもとで行われましたが、今後はこのようなことは行わず、最初で最後ということでした。古い楽器ですから壊れてしまうということも考えられますから。その「笛」の音程から、「琵琶」「四線(すうせん)」とのかねあいを勘案しながら糸の太さを決めていきました。その結果、一の糸を「35-1 義太夫・太口」、二の糸「25-1」、三の糸「20-1」、四の糸「16-2」としました。

そして演奏するためには、この「長線(ちゃ­んせん)」の四本の弦を調弦をしなければなりません。「長線(ちゃんせん)」の祖先である「阮(げん)」の調弦であった「清風調」、それに「四度調絃」「五度調絃」を試した結果、この「長線」に付けられているフレットでは「四度調絃」がもっとも合理的な調弦であることが確認できました。簡単に書きましたが、何ヶ月もかけての試行錯誤の末のことですよ。とにかく数種類の音階を再現できました。

ただ実際にどのような音楽が奏でられたのかは確実には判っていませんが、「琉球王朝江戸上り」の際、この式樂楽器で演奏された曲目の題名の多くが、中国・明代の王圻(おうき)によって著された『續文献通考』に記されているので、中国明の宮廷音楽に影響されているのは確かなようです。

現在、復元された楽器は「首里城」に展示されています。とても美しい楽器です。また、沖縄県の有志グループによってレプリカ的な楽器で演奏会も催されています。

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