夜行列車

この悲しみは
過ぎし時の彼方から こぼれ出てくものなのか

いやちがうぞ、ちがうぞ
これはまだ来ぬ未来の虚空から
吸い取り紙のように滲み出て 私の心を静かに浸す

約束された悲しみだ

幾夜を通り抜ける 夜行列車のように
ガタゴトと その悲しみの森に向かう

風は流れ 川は流れ 雲は流れ 時は流れ 夢は流れ 私は流れ
或る日の 或る時の 或る場所で 私は静かに眼を醒ます

鳥の声が遠くに聞こえるその朝に 夢も忘れたその朝に
古ぼけたテープレコーダーから聞こえる 君の声のやさしに

私は動けず立ちすくむ