蝙蝠が飛ぶ

蝙蝠が飛ぶ 否、舞うと言った方が良い
十五畳程の部屋の中で 豆電球に照らされ
三匹の蝙蝠が 縦横無尽に舞っていた


上に昇れば下に落ち 横に滑れば翻り 右に左に
瞬くことも出来ない素早さで 三匹の蝙蝠が舞っていた
狭い部屋の中で 何処にもぶつかることも無く 羽ばたきの音もしない


深夜の本堂の静寂の中に 豆電球に照らされた蝙蝠達は
障子にその影を映し 部屋を大きな走馬灯に変えた


私は移り変わる影すら追うことも出来ず
唯、唯その光景を眺めていた


何れ程の時が経ったのかは判らなかったが
蝙蝠達は一瞬にして姿を消した


後には豆電球の薄明かりに照らされた いつもの静寂が残された