再編集、「雨は時を打つ」(The orange flame knocks on the door of the bygone days)

  • 2023年3月30日 11:14

再編集、「雨は時を打つ」(The orange flame knocks on the door of the bygone days)、In my room。

父は桜が満開のときに死んだ。家から歩いて10分くらいのところに小ぢんまりした町営の墓地があって、そこには小屋のような焼き場がある。昔は専門の人がいたそうだけど今は町役場の人がその度に来ているらしい。伊勢湾台風のときに氾濫した福田川という川の土手下にあって、煙突から出る荼毗の煙が静かに晴天の青空に溶けて行った。

終わるまでに一時間程かかるので葬儀に列席された皆さんは一旦葬儀場に戻ったけれど、僕は一人残り煙突から出る煙をぼーっと見ていた。

地面にポッカリと開いた大きな深い穴を無言のまま覗き込んでいる様に止まった時がゆっくりと過ぎてゆき、燃えさかるオレンジ色の炎は幽かな音を立てて過ぎし日の扉を叩く。

秋の様な春の日に、私の夢の中で父の夢は静かに醒めていった。

 

 

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