「シンドラーのリスト」ではなく「ショアー」です

  • 2013年8月 7日 13:42

ここのところ、麻生副総理のナチス発言が世間を騒がせている。その発言自体はまったくの論外だが、それについて、コメンテイターのデイブスペクターさんがテレビで、「麻生さんには、映画の『シンドラーのリスト』を見てもらいたいですね」とか批判されていたようですが、いやいや、違いますよ、麻生副総理に見てもらいたいのは、『シンドラーのリスト』ではなくて『ショアー』や『夜と霧』ですよ。

映画『SHOAH ショアー』、クロード・ランズマン監督(1976‐1985)。上映時間は9時間30分、製作には1974年から11年の歳月を費やしている。ユダヤ人絶滅政策(ホロコースト)に関わった人々へのインタビュー集の形をとっているが、まったくのドキュメンタリーではない。日本での公開は1995年、東京日仏学院で行われたそうだが、私は随分前にNHKで放送されているのを見た。9時間30分の全編を見たわけでないと記憶しているが、その強烈な印象や聞き覚えのない『ショアー』という題名が、ホロコーストやアウシュビッツという言葉が人びとの口に上る度に記憶の底からフワリと浮かんで来る。

たしか、最後は、走っている列車から線路を撮ったシーンがずーっと続いて終ったように記憶している。その線路は収容所に続いているかのように・・・。口ではあまりうまく言い表せないので、なにかの機会に一度部分的にでも見られんことを。

ホロコーストという言葉は、古代ユダヤ教の祭事で神前に供える犠牲という意味なので、これを用いず、ヘブライ語で ”絶滅や災厄” を意味するショア (השואה) を用いたそうである。

その他に、実際の映像的ドキュメンタリーの、アラン・レネ監督の『夜と霧』(55年)があるが、どちらも一度見たらナチズムにとどまらず、人間という動物そのものの所業について深く考えさせられる。そして、そのことをどのように考えとらえるかは、一人一人の人間の人間力と感性に関わり、また、問われることにもなる。麻生副総理のようにナチスを引き合いに出すことなど決して起こりえないのである。

 

 

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