1991年 CD「絲夢」から『蕾(つぼみ)〜風にあり』

  • 2021年4月 9日 18:00

1991年 CD「絲夢」から『蕾(つぼみ)〜風にあり』。

「蓮の咲く池」や「月のささゆり」「陽炎」等とは曲調がずいぶん変わり、歌の歌詞に「そんなにふるえて笑っていると ただ悲しみの深さがわかるだけだよ」とありますが、突き放しているのではありません。

1987年、僕が秦琴奏者としてはじめてホールコンサートが出来るようになったその日、彼は楽屋に来ました。日本間の楽屋でしたが彼は祝福するようにうれしそうに座って笑っていました。にこにこしながらを僕を見ていましたが酒のせいでこきざみにふるえているのがわかりました。僕よりずいぶん年上の彼に僕は、「酒、あんまり飲んじゃダメだよ」なんて云うと、彼は「誰に言ってんだよー」と笑っていました。僕はそれ以上なにも言わなかったけれど、彼の心の奥に隠れた苦しみや悲しみを僕は感じていました。

彼は当時夫婦で一人芝居のような演劇をしていました。奥さんが語って演じ、彼は演出とか舞台監督のようなことをしていましたが、僕は何度か秦琴の演奏で一緒に出演しました。時には僕のライブのときの搬送を手伝ってくれました。

久しぶりに新宿・朝日ホールの楽屋で会ってからすこしして、小学生の子供と奥さんを残して彼はこの世を去りました。悲しいというより悔しかった、戦友をなくしたようで。そのころの僕に影響を与えた人の一人です。忘れられない人です。

新宿・朝日ホールコンサート

http://akifukakusa.com/archives/2008/01/post_5.html

「絲夢」は全9曲のうち4曲がソロで2曲がデュオなのでほとんど秦琴のソロアルバムのような感じです。デジタル録音された音源のミックスダウンに、スチューダー製のハーフインチ、76/sec、のアナログのテープレコーダーを用い「秦琴」の絹糸絃の音色を最大限に引き出した作品です。
http://akifukakusa.com/2009/07/itonoyume.html

30年も前ですからすでに廃盤となっていますが、CD「絲夢」についてこんな論評もあります。
https://www.fondsound.com/aki-fukakusa-%e6%b7%b1%e8%8d%89%e3%82%a2%e3%82%ad-silk-strings-enchanting-%e7%b5%b2%e5%a4%a2-1991/#more-9499

1991年 CD「絲夢」から『蕾(つぼみ)〜風にあり』

 

 

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