- 2021年8月18日 12:21
第三十五回 In my room『雨は時を打つ』
雨は山の木々を打つ、雨は野を打つ、雨は蓮の葉を打つ、雨は街を打ち、人を打ち、雨は時を打つ。父は桜の満開の季節に死んだ。町で亡くなった人の多くは町営の焼き場で荼毘に付される。小さな小屋の煙突から命の煙が空に溶けてゆき、燃えさかるオレンジ色の炎は幽かな音を立てて過ぎし日の扉を叩く。雨の日には時々父が荼毘に付された時のことを思い出す。重い話に軽い曲。
第三十五回 In my room『雨は時を打つ』
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