石の『黒冬瓜』

  • 2015年10月12日 01:05

先日、金沢美大(金沢美術工芸大学)出身の芸術家が集まった集団「アトリエかつびの44年目」展、に行って来た。そのリーダー的存在の山本明良氏は石をあ つかう作家で大きなモニュメントも製作するが、今回は両手に乗るほどの小さな『黒冬瓜』が展示してあった。石を(多分御影石?)研き上げた作品だが、一度石を砕いてからまた集めて形を作り、研きあげてある。写真では判りにくいが、いびつな形や貫入を思わせるヒビが不思議と心地良く、繊細なセンスが感じられる。

しかしそれにもまして僕が感じたのは、ある「到達感」ともいうような感覚だ。彼は僕より二つ年上の68歳なのだが、思いつきでこの作品を製作したというより、なにかこの作品に到達した、と云う感じがした。おそらく若い時にはこのような作品は出来なかったような気がする。僕自身の音楽もそうだけれど、若いときの音は活きが良くそれはそれで面白いけれど、今のような「秦琴」が奏でる音楽はその時期にはけっして創ることはできなかったと思う。時が積み重なっ た故に出来上がってくる作品、彼の『黒冬瓜』にはそんな「到達感」を感じた。

西洋的な芸術もいいけれど、「利休の茶碗」を思わせるような静かな深い芸術もあっていい、彼の『黒冬瓜』を見てふとそんなことを考えた。音楽だって、織部のような音、宗達や光悦のような琳派のような音楽、そんな「粋」な音楽もいいよね。
ただ、台になっている白い大理石はちょっと「違うな」、と彼と二人で話したけれど・・。

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