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「西光寺」コンサート報告「その3」−曲目解説と新聞記事です

  • 2009年12月02日
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「西光寺」コンサートの曲目と新聞記事です。2009年11月19日の「中日新聞」尾張版に載りました。

曲目です。当日のプログラムに書いた文からの抜粋をもとに解説をします。

一部

『沙羅の糸』

いつも大体最初に演奏します。僕にとっては演奏し易い曲なので最初に演奏して心を落ち着かせます。

プログラムより

「人の出会いは不思議です。古の人はこれを「縁(えにし」とも呼びました。命はこの「縁」の舟に乗り、時の河を流れ、そしてこの夜の一時、此処「西光寺」に出会います。」

 

『烈(NHKドラマ「蔵」より』

僕のコンサートに来られる方にはお馴染みの曲です。

プログラムより

「宮尾登美子さんの原作『蔵』がNHKでドラマ化され、その音楽を担当しました。その中から、松たか子さん(幼い時は井上真央さん、松さんはその当時まだ高校生で井上真央さんは本当に子供で見事な子役でした)が演じた「烈」という名を持つ主人公のテーマソングです。」

 

『A線上の「月の沙漠」』

プログラムより

「皆さんおなじみの曲です。この『月の沙漠』を「秦琴」の三の糸(一番細い絃)だけで演奏します。三の糸は所謂「A・ラ」の音なので『A線上の月の沙漠』という訳です。まぁ『G線上のアリア』のもじりですね。」

 

『蟹江祭り幻想(とっちんてれすく)』

プログラムでは『晴れのち晴れ』でしたが変更しました。僕の音楽の原風景のひとつは蟹江のお祭りの音かもしれません。幼い頃そのお祭りで「とっちんてれすく、とちてーすとん」なんて口で憶えて太鼓を叩いていました。そんな「蟹江祭り」のお囃子曲をアレンジしました。

 

二部

『荒城の月』

おなじみの滝廉太郎作曲の名曲です。コンサートのタイトルが「月下秦琴」なので取り上げてみました。

 

『わくらばや大地になんの病ある』(高浜虚子)

自ら命を絶つ人が非常に多くなった社会になってしまいました。深い想いののなかの出来事です。僕の音楽はその人達の心を癒したりすることは到底出来ませんが、ときどきその人達の悲しみや、孤独にふと想いを馳せることがあります。独り言の様な歌ですが、僕の詩の「夜行列車」からイメージを引用してこんな歌が出来ました。【ファバリットのSongsで曲が聴けます

プログラムより

「わくらば、とは青々とした葉の中でポツンと黄色くなり、朽ちて行く葉のことです。虚子の云う「病ある大地」とは私達の社会そのもののような気がします。「わくらば」がなんと多くなってしまった社会でしょう。そんなことに想いを馳せ、歌を作りました。」

ー歌詞ですー

さらさらと流れる 小川のように
夏の影濡らしてく 雨のように

君は泣いてる

時々天井から 零れ落ちてくる
まだ来ぬ時の中の 悲しみのように

君は泣いてる

こんなに空が青いのに こんなに花が咲いてるのに
どうして君は 一人悲しい

こんなに笑いが溢れてるのに こんなに物も溢れてるのに
どうして君は 一人悲しい

そよ風揺れる 草原に眠る
君の上には 満天の星

蛍のような 光を追えば
空覆う銀河は 海に落ちてく

こんなに日本は平和なのに こんなに皆幸せそうなのに
どうして君は 一人悲しい

さらさらと流れる 小川のように
夏の影濡らしてく 雨のように

時々天井から 零れ落ちてくる
まだ来ぬ時の中の 悲しみのように

君は泣いてる 君は泣いてる

 

『月氏幻想ーセレスの見た夢ー』

少し前までは『月氏幻想』でしたがこの題名に替えました。月氏の民は紀元前数百年も前から中央アジアを遊牧し、嘗て西域のタリム盆地の南に在ったコータン(干闐・うてん)という国から玉を中国にもたらし、中国から絹を西方に運びました。

プログラムより

「セレス、とは「月氏」とも云われた、紀元前三〜四世紀頃にはすでに中央アジアを遊牧していた民です。中国では「玉(ぎょく)の民」と謂れ、西方の人びとは「絹の民」と呼んでいました。中国の絹は彼らを媒介にして西方に運ばれていました。この「セレス(月氏)」からクシャーナ朝、ササン朝ペルシャにかけての中国に及ぼした文化の影響は、「秦琴」という楽器の歴史に多いに関係があると思われるのです。そんなイメージを曲にしてみました。」
ファバリットのSongsで曲が聴けます

 

『山百合一輪川に流せば』

もう随分前ですが、川端茅舎(かわばたぼうしゃ)のこんな俳句を知りました。「朴散華すなわち知れぬ行方かな」。川端茅舎は日本画家川端龍子の異母弟です。詳しくは書きませんが、44才で亡くなった高浜虚子の愛弟子です。川端茅舎のことはこちらを参照して下さい(リンクしてます)。

当時の僕はまだ若かったのでこの句を実感として捉えられなかったのですが、親しい知人を相次いで亡くした時に、人の悲しみの源に想いを寄せこんな歌が出来ました。

人は何故悲しむか、その答えを見つけました。時には大いなる喜びにとして現れ、時には深い悲しみに姿を変えます。その源を探れば人間の慈悲心の泉に落ちて行きます。慈悲心故に人は悲しむのです。悲しみの本体は誰もが持っている慈悲心です。キリスト的に言えば「愛」ですよ。見失ってはいけません。どこか心の片隅でもいいですからしっかりと握りしめていて下さい。そしてときどきそれを発動して下さい。

プログラムより

「命あるものの別れの歌です。命の別れに出会うと云うことは、今をどう生きるかを考えることです。」

ー歌詞ですー

人ごみから 聞こえ来るは
風の様な静かな音

いつの間にか 外は雨降る
燕飛ぶ五月の空

幾千の夜 過ごし来ても
必ずや別れあらん

悲しみは 何処から来る
花散れば行方知れず

 

『星の大地』

最近はいつも最後に演奏している、僕のテーマソングのような曲です。

プログラムより

「蟹江の空に「天の川」が見えなくなったのはいつの頃からでしょう。『星の大地』と云うと、大草原か何処かの満天の星空を思い浮かべますが、いえいえそうではありません。この蟹江でも、汚れた空のその上には今も無数の星の銀河が横たわり、満天の星が瞬いているのです。「天の川」をなくしたのは私達の心なのです。」

 

こんな感じのコンサートでした。皆さんありがとうございました。

 

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